高村光太郎『心中宵庚申』朗読mp3

死んでも去りはしませぬと
立派に誓言しやつた仁左衛門が
あれ、去り状を書く
女房のお千代どのに--

ぢつと噛みしめたふところ紙を落して
思はず驚く成駒屋の顔
梅雨の夜風が何処からか吹いて来て
ちよぼでは、わつと泣き落す

ふるい、ふるい人情の烈しいひかりが
もののかげから忍んで泣く
死ぬるは切ない美しさ
今の世でも


歌舞伎の「心中宵庚申」から着想を得た詩です。「仁左衛門」は「にざえもん」と読み、歌舞伎の名跡の一つ。役名は「半兵衛」なのにあえて役者名を出し、歌舞伎鑑賞であることを強調してるようです。

嫁が舅にいびり抜かれたあげく立場が苦しくなり、夫婦で心中するという話です。

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