高村光太郎『へんな貧』朗読mp3

この男の貧はへんな貧だ。
有る時は第一等の料理をくらひ、
無い時は青菜に芋粥。
取れる腕はありながらさつぱり取れず、
勉強すればするほど仕事はのび、
人はあきれて構ひつけない。
物を欲しいとも思はないが
物の方でも来るのをいやがる。
中ほどといふうまいたづきを
生まれつきの業がさせない。
妻なく子なきがらんどうの家に
つもるのは塵と木片(こっぱ)ばかり。
袖は破れ下駄は割れ、
それでも自分を貧とは思へず、
第一等と最下等とをちやんぽんに
念珠(ねんじゅ)のやうに離さない。
何だかゆたかな有りがたいものが
そこら中に待ってゐるやうで
この世の深さと美しさとを
身に余る思でむさぼり見る。
この世に幸も不幸もなく、
ただ前方へ進むのみだ。
天があり地面があり、
風があり水があり、
さうして太陽は毎朝出る。
この男のへんな貧を
この男も不思議におもふ。


まるで月収8万でパンの耳をかじっているのに50インチのテレビがある現代のフリーターのような詩です。

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