高村光太郎『メトロポオル』朗読mp3を聴く

智恵子が憧れてゐた深い自然の真只中に
運命の曲折はわたくしを叩きこんだ。
運命は生きた智恵子を都会に殺し、
都会の子であるわたくしをここに置く。
岩手の山は荒々しく美しくまじりけなく、
わたくしを囲んで仮借しない。
虚偽と遊惰とはここの土壌に生存できず、
わたくしは自然のやうに一刻を争ひ、
ただ全裸を投げて前進する。
智恵子は死んでよみがへり、
かくの如き山川草木にまみれてよろこぶ。
変幻きはまりない宇宙の現象、
転変かぎりない世代の起伏、
それをみんな智恵子がうけとめ、
それをわたしくが触知する。
わたくしの心は賑ひ、
山林孤棲と人のいふ
小さな生小屋の囲炉裏に居て
ここを地上のメトロポオルとひとり思ふ。


高村光太郎が岩手の花巻の山小屋で自炊生活を送っていた時の詩です。

亡き智恵子夫人の存在をいつも身近に感じていたのでしょう。

「メトロポオル」はフランス語。英語で「メトロポリス」のほうが馴染み深いと 思います。中心地、大都市ということです。

こんな山奥の田舎だが、私にとっては世界の中心なんだ、ということでしょうか。

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