高村光太郎『鯰』朗読mp3
ドコモ・Sバンク→12
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盥の中でぴしやりとはねる音がする。
夜が更けると小刀の刃が冴える。
木を削るのは冬の夜の北風の為事である。
煖炉に入れる石炭が無くなつても、
鯰よ、
お前は氷の下でむしろ莫大な夢を食ふか。
檜の木片は私の眷族、
智恵子は貧におどろかない。
鯰よ、
お前の鰭に剣があり、
お前の尻尾に触角があり、
お前の鰓に黒金の覆輪があり、
さうしてお前の楽天にそんな石頭があるといふのは、
何と面白い私の為事への挨拶であらう。
風が落ちて板の間に蘭の香ひがする。
智恵子は寝た。
私は彫りかけの鯰を傍へ押しやり、
研水を新しくして
更に鋭い明日の小刀を瀏瀏と研ぐ。
高村光太郎は「造形詩」とでもいうべき、彫刻制作にまつわる一群の詩を書いています。
「鯰」は大正14年発表の木彫りの鯰に連動した詩です。
モデルの生きた鯰を見ながら木造を彫っている情況のようです。
学生の頃、参考書かなんかに載ってたのを覚えてます。なつかしいなァ