高村光太郎『上州川古「さくさん」風景』朗読mp3

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どこもかしこも酸つぱいな
なま木の束を釜に入れて
一年三百六十五日
じわじわじわじわ乾溜するので
それでこんな山の奥の淋しい工場が
蒼ずんで、黒ずんで、又白つちやけて
君達までもそんなに水気がなくなつたのか
第一、声が出ないぢやないか
声を出すのはあの自動鉞(まさかり)だけぢやないか
高利のやうに因業なあの刃物だけぢやないか
ひつそりかんとした川古のぬるい湯ぶねに非番の親爺
--お前さんは芸人かね、浪花節だろ
--何でもいいから泊つてけよ
声がそんなにこひしいか
石炭、硫酸、木酢酸
こんな酸つぱい山の奥で
やくざな里の声がそんなにめつためつたに聞きたいか
あいにくながら今は誰でも口に蓋する里のならひだ


昭和四年、高村光太郎が上州川古(群馬県北部)へ旅行した時の体験に 基づきます。

この頃社会はしだいに言論統制の動きが強くなっていました。

都会から来た人ということで村の人たちが話を聞きたがるが、あいにく今は 人の口をふさぐ時代なのですよ…といった感じです。

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