高村光太郎『値ひがたき智恵子』の朗読を聴く
智恵子は見えないものを見、
聞えないものを聞く。
智恵子は行けないところへ行き、
出来ないことを為(す)る。
智恵子は現身(うつしみ)のわたしを見ず、
わたしのうしろのわたしに焦がれる。
智恵子はくるしみの重さを今はすてて、
限りない荒漠の美意識圏にさまよひ出た。
わたしをよぶ声をしきりにきくが、
智恵子はもう人間界の切符を持たない。
「風にのる智恵子」「千鳥と遊ぶ智恵子」と同じく、智恵子夫人が
精神を患って九十九里浜に転地療養していた昭和12年の作です。
「智恵子はもう人間界の切符を持たない」…悲痛な言葉です。
発音的には「もう」が難しかったです。だらしなく鼻息が抜けてしまうので、意識して息の漏れを少なくしました。
「ああ」「おお」「もう」など、感嘆符は息が漏れがちなので注意です。