高村光太郎『クリスマスの夜』朗読mp3
わたしはマントにくるまって
冬の夜の郊外の空気に身うちを洗ひ
今日生まれたといふ人の事を心に描いて
思はず胸を張ってみぶるひした
--彼の誕生を喜び感謝する者がここにも居る
彼こそは根源の力、万軍の後楯(うしろだて)
彼はきびしいが又やさしい
しののめの様な女性のほのかな心が匂ひ
およそ男らしい気凛(きりん)がそびえる
此世で一番大切なものを一番むきに求めた人
人間の弱さを知り抜いていた人
人間の強くなり得る道を知っていた人
彼は自分のからだでその道を示した
天の火、彼
--彼の言葉は痛いところに皆触れる
けれども人に寛濶な自由と天真とを得させる
おのれを損ねずに伸びさせる
彼は今でもそこらに居るが
いつでもまぶしい程初めてだ
--多くの誘惑にあひながら私も
おのれの性来を洗ってきた
今彼を思ふのは力である
飽くまで泥にまみれた道に立たう
今でも此世には十字架が待っている
それを避けるものは死ぬ
わたしも行こう
彼の誕生を喜び感謝するものがここにも居る
闇の夜路を出はづれると
ぱっと明るい灯がさしてもう停車場
急に陽気な町のざわめきが四方に起り
家へ帰ってねる事を考へている無邪気な人達の中へ
勢のいい電車がお伽話の国からいち早く割り込んで来た
高村光太郎はクリスチャンにはなりませんでしたが、キリストの教えには深い関心を抱いて
いたようです。
カラオケで歌いまくった直後に録音したので、シンドかったです。