高村光太郎『苛察』朗読mp3
大鷲が首をさかしまにして空を見る。
空には飛びちる木の葉も無い。
おれは金網をぢやりんと叩く。
身ぶるひ――さうして
大鷲のくそまじめな巨大な眼が
槍のやうにびゆうと来る。
角毛(つのげ)を立てて俺の眼を見つめるその両眼を、
俺が又小半時じつと見つめてゐたのは、
冬のまひるの人知れぬ心の痛さがさせた業(わざ)だ。
鷲よ、ごめんよと俺は言つた。
この世では、
見る事が苦しいのだ。
見える事が無残なのだ。
観破するのが危険なのだ。
俺達の孤独が凡そ何処から来るのだか、
この冷たい石のてすりなら、
それともあの底の底まで突き抜けた青い空なら知つてゐるだらう。
高村光太郎の詩には動物に呼びかける
詩が多くあります。『ぼろぼろな駝鳥』『象の銀行』など。
この詩『苛察』は檻に閉じ込められた鷲の孤独に自分の孤独を重ねて
共感しているのです。「俺達」というワッと肩を組む感じの言葉が印象深いです。
「苛察」は聞きなれない言葉ですが、細部にわたって細かく詮索することです。