高村光太郎『孤坐』朗読mp3
物すごい深夜の土砂降りが家をかこむ
鼠も居ない落莫の室にひとり坐って
彫りかけの木彫りの鯉を押へてゐる
掌は鱗にふれて不思議につめたく
そこらの四隅にそこはかとなく
身に迫るものがつまって来る
鯉の眼は私を見てゐる
私は手を離さずに息をこらし
夏の夜ふけの土砂降りに耳を傾ける
どこか遠い土地に居るやうな気がする
現世でないやうな気がしてくる
最初「胡坐(あぐら)」かと思いました。「孤坐」は聞きなれない言葉です。
「一人座っている」という文字通りの意味です。落ち着いたよい雰囲気の詩です。