高村光太郎『象の銀行』朗読mp3
セントラル・パアクの動物園のとぼけた象は、
みんなの投げてやる銅貨(コツパア)や白銅(ニツケル)を、
並外れて大きな鼻づらでうまく拾つては、
上の方にある象の銀行(エレフアンツバンク)にちゃりんと入れる。
時時赤い眼を動かしては鼻をつき出し、
「彼等」のいふこのジヤップに白銅を呉れといふ。
象がさういふ。
さう言はれるのが嬉しくて白銅を又投げる。
印度産のとぼけた象、
日本産の寂しい青年。
群集なる「彼等」は見るがいい、
どうしてこんなに二人の仲が好過ぎるかを。
夕日を浴びてセントラル・パアクを歩いて来ると、
ナイル河から来たオベリスクが俺を見る。
ああ、憤る者が此処にもゐる。
天井裏の部屋に帰って「彼等」のジヤップは血に鞭うつのだ。
セントラルパーク動物園の芸を仕込まれた象に
留学中の疎外感を重ね合わせ、共感している詩です。
高村光太郎は明治39年から42年まで、米国、英国、フランスに留学し
ました。留学中の心情を歌った詩には他に「パリ」があります。
気持ちはわかるけど、そんなん言うならアメリカに来んなよ
ともちょっと思います。
セントラルパーク動物園 (Central Park Zoo)は
公園内の小さな動物園です。19世紀に設立され、1988年からは
ニューヨーク市の委託を受けたWCS(野生動物保護協会)が
管理・運営しています。
「ナイル河から来たオベリスク」は、セントラルパーク内にある
オベリスク(古代エジプト時代の記念碑)で、アメリカがスエズ運河開通を援助
したお礼としてエジプトから寄贈されたものです。
創建は紀元前15世紀のトトメス3世と云われています。
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