高村光太郎『報告(智恵子に)』朗読mp3
日本はすつかり変りました。
あなたの身ぶるひする程いやがつてゐた
あの傍若無人のがさつな階級が
とにかく存在しないことになりました。
すつかり変つたといつても、
それは他力による変革で
(日本の再教育と人はいひます。)
内からの爆発であなたのやうに、
あんないきいきした新しい世界を
命にかけてしんから望んだ
さういふ自力で得たのでないことが
あなたの前では恥しい。
あなたこそまことの自由を求めました。
求められない鉄の囲の中にゐて、
あなたがあんなに求めたものは、
結局あなたを此世の意識の外に逐ひ、
あなたの頭をこはしました。
あなたの苦しみを今こそ思ふ。
日本の形は変りましたが、
あの苦しみを持たないわれわれの変革を
あなたに報告するのはつらいことです。
亡くなった妻智恵子への報告という形で
戦後の実感を語っています。
光太郎の妻智恵子は平塚雷鳥らがおこした女子社会運動に
参加し女性の地位向上のために活動しました。
また油絵を学び「青鞜」の表紙を飾ったりしました。精神を病んで東京・品川のゼームス坂病院に入院してからも
病室で多くの紙絵を制作しました。
社会運動・芸術制作の両面から、智恵子は激しい革命を望んでいたわけです。
その智恵子が望んだ革命が達成されたはずなのに
この空疎間は何だ…やるせない詩です。
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