高村光太郎『あどけない話』朗読mp3
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智恵子は東京に空が無いといふ。
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間(あいだ)に在るのは、
切っても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に
毎日出ている青い空が
智恵子のほんとうの空だといふ。
あどけない空の話である。


レモン哀歌」と並び「智恵子抄」の中で有名な詩でしょう。教科書などにも採られています。

智恵子さんとラブラブな時代(結婚十年目)の詩です。
爽やかで、幸せいっぱいな感じで、思わず頬が緩みます。

この後、智恵子さんの精神が冒されていく中で作られた 詩「山麓の二人」「千鳥と遊ぶ智恵子」は凄惨で胸が痛くなります。

「レモン哀歌」はその二作に比べるとむしろ抑えたトーンですが、こういう幸せだった時代のことを思いながら読むと、いっそう切実なのです。

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