高村光太郎『冬の言葉』朗読mp3
冬が又来て天と地とを清楚にする。
冬が洗ひ出すのは万物の木地。
天はやつぱり高く遠く
樹木は思いきって潔らかだ。
虫は生殖を終へて平気で死に、
霜がおりれば草が枯れる。
この世の少しばかりの擬勢とおめかしとを
冬はいきなり蹂躪する。
冬は凩の喇叭を吹いて宣言する、
人間手製の価値をすてよと。
君等のいぢらしい誇りをすてよ、
君等が唯君等たる仕事に猛進せよと。
冬が又来て天と地とを清楚にする。
冬が求めるのは万物の木地。
冬は鉄碪を打つて又叫ぶ、
一生を棒にふって人生に関与せよと。
高村光太郎は「冬の詩人」と呼ばれるほど、冬の詩が多いです。
「道程」の『冬が来た』、『冬の詩』、『冬の送別』、「猛獣篇」の『冬の奴』『冬の言葉』など。
冬の厳しさ、すべてをむき出しにして飾り物を許さない
ところ、ぴゅううと北風が吹いてきて、身が引き締まる。あの独特の
緊張感が詩人の心を捉えたのでしょうか。
「一生を棒にふって人生に関与せよ」は力づよい言葉です。
メンドくさくても、ストレスだらけでも、とにかく人間と関われ、
仕事に没頭せよということでしょう。
「ある墓碑銘」には「一生を棒に振りし男此処に眠る」と
あります。「冬の言葉」は「ある墓碑銘」の三日後に制作されました。そのまま続編という感じです。
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