高村光太郎『悪婦』朗読mp3
雪の頃からかかつている詩が
桜が散つてもまだ出来ない。
この悪婦につかまつて
おれは一歩も前進できない。
脳髄皮膜にひつかかる
ひとつの観念が異物のやうに
造型機能の邪魔をする。
造型機能の自律性は
そんなものにお構ひなく
微妙の世界におれを引くが、
悪婦の吐息は昼夜を分たず
おれをもとめて離さない。
種まきはおくれるし、
いもはくさるし、
蕨はふけるし、
いつのまにか炭火も消える。
もう碇草がいつばい咲いて
時々雹が肩をうつ。
あの観念をどうしてくれよう。
スランプの時の詩のようです。
「脳髄皮膜にひつかかるひとつの観念が異物のやうに
造型機能の邪魔をする」…この当時の人は言葉が難しかったんですね。
惨めな、情けない感じを出すべく朗読しました。