高村光太郎『松庵寺』朗読mp3を聴く
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奥州花巻といふひなびた町の
浄土宗の古刹松庵寺で
秋の村雨ふりしきるあなたの命日に
まことにささやかな法事をしました
花巻の町も戦火をうけて
すつかり焼けた松庵寺は
物置小屋に須弥壇をつくつた
二畳敷のお堂でした
雨がうしろの障子から吹きこみ
和尚さまの衣のすそさへ濡れました
和尚さまは静かな声でしみじみと
型どほりに一枚起請文をよみました
仏を信じて身をなげ出した昔の人の
おそろしい告白の真実が
今の世でも生きてわたくしをうちました
限りなき信によつてわたくしのために
燃えてしまつたあなたの一生の序列を
この松庵寺の物置御堂の仏の前で
又も食ひ入るやうに思ひしらべました
高村光太郎は昭和20年5月、宮沢賢治の実家を頼って奥州の花巻に疎開し、そこで7年間をすごしました。すでに智恵子夫人が亡くなってから7年が経過しています。
光太郎は智恵子夫人の命日10月5日には松庵寺(現岩手県花巻市双葉町6-4)での法事を欠かしませんでした。
もう激しい悲しみとか泣きじゃくるということではないが
心にぽっかり穴があいた、肩の力が抜けた
感じです。
それが戦火に焼けた松庵寺の侘しいたたずまいと重なり、心を打ちます。
雨がさしこんで和尚さんの衣の裾が濡れていたというミクロな描写がリアルです。
奥州花巻には高村山荘・高村光太郎記念館(岩手県花巻市太田3-91-3)があります。現在でも高村光太郎が疎開してきた5月15日を記念して「高村祭」が開かれています。
高村光太郎記念館のそばには光太郎が花巻に疎開してから最初に書いた文章「雪白く積めり」の碑が建っています。
以前よりだいぶ自然に朗読できた気がします。