高村光太郎『ある墓碑銘』朗読mp3
一生を棒に振りし男此処に眠る。
彼は無価値に生きたり。
彼は唯人生に遍満する不可見の理法に貫かれて動きたり。
彼は常に自己の形骸を放下せり。
彼は詩を作りたれど詩歌の城を認めず、
彼の造型美術は木材と岩石との構造にまで還元せり。
彼は人間の卑小性を怒り、
その根元を価値感に帰せり。
かるが故に彼は無価値に生きたり。
一生を棒に振りし男此処に眠る。
無駄とされるようなことでも、敢えてやるのだ。命がけでやるのだ。
高村光太郎はその酔狂にこそ強いプライドを抱いていたのではないでしょうか。
自嘲の形をとっていますが、実は強い誇りが
溢れていると思います。
「無価値」という言葉がキーワードです。芸術ということだけで
なく、人と関わる、話す、散歩をする、景色を愛でる…そういった
諸々の腹の足しにならないこと、一般には「無駄」
と言われるようなこと。それにこそこだわりたいうことでは。