高村光太郎『十和田湖畔の裸像に与ふ』朗読mp3
ドコモ・Sバンク→12
ドコモ・Sバンク→12
銅とスズとの合金が立ってゐる。
どんな造型が行はれようと
無機質の図形にはちがひない。
はらわたや粘液や脂や汗や生きものの
きたならしさはここにない。
すさまじい十和田湖の円錐空間にはまりこんで
天然四元の平手打をまともにうける
銅とスズとの合金で出来た
女の裸像が二人
影と形のように立ってゐる
いさぎよい非情の金属が青くさびて
地上に割れてくづれるまで
この原始林の圧力に堪えて
立つなら幾千年でも黙って立ってろ。
高村光太郎作「乙女の像」は、青森県十和田湖畔の休屋御前浜という地点に今でも立っています。
昭和28年秋、十和田国立公園労者顕彰記念として建立されたものです。
この裸像が高村光太郎最後の彫刻となりました。
光太郎はこの裸像に亡き妻智恵子への追慕をこめ、死ぬ前の「宿題」のような
気持ちで取り組んだようです。