高村光太郎『刃物を研ぐ人』朗読mp3
黙って刃物を研いでゐる。
もう日が傾くのにまだ研いでゐる。
裏刃とおもてをぴったり押して
研水をかへては又研いでゐる。
何をいったい作るつもりか、
そんなことさへ知らないやうに、
一瞬の気を眉間にあつめて
青葉のかげで刃物を研ぐ人。
この人の袖は次第にやぶれ、
この人の口ひげは白くなる。
憤りか必至か無心か、
この人はただ途方もなく
無限級数を追ってゐるのか。
高村光太郎の詩はひねった構成も少なく、
主題がハッキリしていて言葉が平易で、わかりやすいです。
そら「無限級数」は変な言葉ですが、なんとなく真理というか宇宙というか、
ワーーッとスゴイ勢い、ニュアンスは伝わります。
刃物の先に気合を込めて、一心に研いでいる、そのピィンと張り詰めた
緊張感が、よく伝わってくる詩です。
なかなかコクのある声で録れたと思います。「黙って刃物を研いでいる」の
「いる」が、自然な音になってます。喉が荒れていると「イ」音は
とてもイヤな歪みを見せるのです。