高村光太郎『新緑の頃』朗読mp3

青葉若葉に野山のかげろふ時、
ああ植物は凄いと思ふ。
植物はもう一度少年となり少女となり
5月6月の日本列島は隅から隅まで
濡れて出たやうな緑のお祭。
たとへば楓(かえで)の梢を見ても
うぶな、こまかな仕掛に満ちる。
小さな葉っぱは世にも丁寧に畳まれて
もっと小さな芽からぱらりと出る。
それがほどけて手をひらく。
晴れれば輝き、降ればにじみ、
人なつこく風にそよいで、
ああ植物は清いと思ふ。
さういふところへ昔ながらの燕が飛び
夜は地虫の声さへひびく。
天然は実にふるい行状で
かうもあざやかな意匠をつくる。


高村光太郎は「冬の詩人」と呼ばれ、四季の詩では冬を描いたものが圧倒的に多いですが、 このように、新緑の爽やかさもまたうたいあげているのです。「植物はもう一度少年となり少女となり」など、洒落た表現をまじえつつ、あくまで平易に、わかりやすい言葉で。

「植物は清いと思う」など、ストレートすぎて気恥ずかしいとも思うのですが、そこに 技巧を加えず、出たままの言葉をズバッとぶつける、その勢いが大好きです。

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