高村光太郎『蝉を彫る』朗読mp3
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冬日さす南の窓に坐して蝉を彫る。
乾いて枯れて手に軽いみんみん蝉は
およそ生きの身のいやしさを絶ち、
物をくふ口すらその所在を知らない。

蝉は天平机の一角に這ふ。
わたくしは羽を見る。
もろく薄く透明な天のかけら、
この虫類の 持つ霊気の翼は
ゆるやかになだれて追らず、
黒と緑に装ふ甲冑をほのかに包む。

わたくしの刻む檜の肌から
木の香たかく立つて部屋に満ちる。
時処をわすれ時代をわすれ
人をわすれ呼吸をわすれる。
この四畳半と呼びなす仕事揚が
天の何処かに浮いてるやうだ。


高村光太郎は、よほど蝉の造形に感心が高かったようで、いくつも 蝉の彫刻を彫っています。
『蝉の美と造型』というエッセイの中で、蝉の魅力について熱く語っています。

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